木川仁

Profile

大阪大学大学院工学研究科プロセス工学専攻博士課程前期修了(工学修士)。専攻は、有機化学および物理化学をベースにした応用化学(工業化学)分野。
大手日用品化学会社にて研究開発部門に22年間従事。界面科学技術の応用展開、産業向け商品開発や家庭品向けの商品開発を担当。その後、大手産廃処理会社で企画開発に3年間従事。収集運搬・中間処理・最終処分に関する産廃処理技術を中心とした新規技術開発と事業化を担当。
2007年入社。技術をベースにした処理・リサイクルの事業化や経営部門のコンサルティング、廃棄物処理会社の監査・教育・格付けを担当。
危険物取扱者(甲種)。

 

広域認定の課題と廃棄物処理事業者の対応

~産廃処理事業者は、如何に認定制度に向き合えばよいのか~

NDUST(2011年5月)  木川 仁

→Summary
廃棄物処理法は、廃棄物の広域的な適正処理を推進するため、3つの大臣認定を特例(表1参照)として認めている。その内、最も認知度があり他の認定制度に比較して、その対象品目も多種多様であるため、その応用展開性が高いのが広域認定である。
広域認定制度は、製品の性状や構造を熟知した製造業から見た場合、その処理方法やリサイクル方法を確立し易く、また、ゼロエミッションを標榜できるため、経営的側面から見た時、重要な選択肢の一つになっている。一方、廃棄物処理事業者から広域認定制度を捉えると、広域認定の名の下に廃棄物処理業の許可を持たない事業者が廃棄物処理を行うことが可能なシステムのため極めて不愉快な制度に見えて来る。さらには、業許可や施設設置許可の認可権限を持つ自治体には、広域認定制度は管轄外との思いもある。つまり、廃棄物処理に携わる主なステークホルダーとなる排出事業者、処理事業者と自治体の内、前者を除いた後2者は、広域認定制度に興味を示さないのが現状だ。
こうした現状を見た時、今後、製造事業者を中心とした広域認定はさらに広がって行くのであろうか。また、現在の広域認定制度が抱える課題は何であろうか。さらには、廃棄物処理事業者、特に産廃処理事業者は、これから広域認定制度とどう向き合えばよいのであろうか。本稿では、これらの疑問について考えた。
 

「廃棄物コンサルティング」という仕事

~産業廃棄物処理事業者による提案型営業活動を考える~

INDUST(2010年10月)  木川 仁

→Summary

本稿は、産廃処理事業者が排出事業者に向けて発信するコンサルティング内容(本稿では、提案型営業活動と置き換える)を考えることにある。株式会社日本廃棄物管理機構(JAAO)が排出事業者に行っているコンサルティング事例を一部紹介しながら、産廃処理事業者が考える営業戦略について述べる。

現在のような厳しい経営環境下で必要な考え方は、顧客ニーズを的確につかみ、解析して顧客が満足する提案を迅速に行うことにある。パートナーである排出事業者のニーズを満たす営業戦略を作り、それを提案型営業活動として実践しなければならない。このベースとなるキーワードは、「コンプライアンス」と「ネットワーク化」であり、それを融合させた「守りと攻め」の両立であると考える。ただ、コンプライアンスは、サバイバルで必要な条件であるが、それだけでは十分でない。必要十分条件としてのネットワーク化を具現化しながら、最終的に「守りと攻め」を両立する施策にまで持って行くことが今の産廃処理事業者に求められる営業戦略ではないだろうか。
 

選ばれる産業廃棄物処理

~行政処分事例から見えてくる姿~

循環経済新聞(2010年8月~11月)  木川 仁

→Summary

平成12年10月排出事業者責任を強化した廃棄物処理法が施行され、また、平成13年5月には環境省より自治体の廃棄物行政担当主管宛に「行政処分の指針」が通知(現在、平成17年指針を運用)されて、一発レッド型(許可取消)の行政処分が急増した。現在、全国の自治体から出される行政処分は、年間およそ1,000件程度になっている。
日本廃棄物管理機構(JAAO)は、全国で毎日のように出される行政処分についてWEB公開している全国の全自治体を毎日、調査分析している。この調査分析から、行政処分率の全国平均値は0.38%となっていることが分かる。平成19年度と平成20年度におけるその値は、それぞれ0.25%であり、この3年間を平均するとおよそ0.3%が平均値になっていた。この値の意味するところは、ある処理事業者が、1年間で行政処分を受ける確率は、0.3%存在することを示している。
ここで、この0.3%の意味をもう少し考えてみる。通常、産業廃棄物処理業を営む処理事業者は家族的な経営を行っている企業が多く、社長任期をおよそ30年とすると、30年間で行政処分を受ける確率は【約0.3%/年 X 30年 = 約9%】となり、一代の社長が在任する期間で見た時、およそ10社に1社が、業許可取消や事業停止を受けることになる。この結論は、法令を遵守して適正処理を実施している処理事業者に当てはまらないと類推できるため極論と考えられがちであるが、極論として片づけられない事例が数多く見られることも現実である。
具体的な事例を紹介しながら行政処分を考えた。

 

金融危機に立ち向かう「廃棄物処理業界のあり方」

循環経済新聞(2009年1月)  木川 仁

→Summary

米国サブプライム問題に端を発した金融危機による再生資源相場の急落と経済活動の低迷が、廃棄物処理業、特に、産業廃棄物(産廃)処理業を営む経営者の大きな経営課題となっている。2008年の夏頃までは、原油や金属・非鉄金属相場が高騰し、資源リサイクル事業に関連する多くの産廃処理業者の経営は順調だったが、9月のリーマンショックから金融不安が深刻化するとその流れは完全に逆転してしまった。実体経済の悪化による廃棄物量の減少や海外処理ルート(再生資源の輸出)の急速な機能停止などの課題が、急に降って湧いた。その結果、ここ数ヶ月の間に産廃処理業者の中で負債総額30億円以上の倒産も増加している。このように金融危機が引き金になった課題に加えて廃棄物処理業界では、法規制対応(コンプライアンス確保)・大手製造業の参入・地球環境問題への対応など、金融危機以前からあった課題も山積している。
2008年10月、米国下院委員会で前FRB議長が「現在、我々は、100年に一度の津波の真っただ中にいる」と述べた。2009年初め、米国では環境課題の解決を一つの政策に掲げた大統領が誕生する。政治的・経済的にダイナミックに変化する世界と今後も日本経済の中で生きて行かねばならない廃棄物処理業界。今回の金融危機がもたらした大津波をリスクに終わらせるだけでなくチャンスに変えるため、具体的な行動を起こして経営を変革して行くことがサバイバルレースに勝ち残るための必須条件と考える。
今回の金融危機で増幅された不安を含めた現状の大きな経営課題は、

  • 急激な経営環境の変化に対応できる施策をどうつくるか
  • 業界に共通した課題を考えた時、新しいビジネスはできないか
などが考えられる。この課題に最適な解答を得ることは容易でないが、経営を継続するには避けて通ることのできない問題でもある。本稿では、これら経営課題を解決する考え方について深堀りしながら、具体的な施策やビジネスチャンスについて考えた。
 

廃棄物処理におけるリスクマネジメントをどう考えるか?

環境新聞(2008年7月~11月)  木川 仁

→Summary

廃棄物処理法が施行されて35年以上の月日が流れ、廃棄物処理業界を取り巻く社会環境は大きく変化した。特に、CSRやコンプライアンスに関する考え方が社会生活にまで浸透した昨今、廃棄物処理に携わる全ての関係者は、目まぐるしく変わる法制度を理解して真摯に日々の業務を進める時代がやって来た。
廃棄物処理法は、廃棄物とされた物に対する規制法であり、業許可と施設許可の2つの許可を基本に成り立っているが、この許可に関連して法的問題が発生した場合、行政処分が行われる。この処分を行う際の目安が、平成13年5月「行政処分の指針について(通知)」(現在は、平成17年8月通知を運用中)として環境省から関係自治体に通達されている。この指針は法律ではなく、あくまでも各自治体が行政指導を行う際の考え方を示すものに過ぎないが、その運用現場では何が行われているのであろうか。

処理業者や行政を中心とした関係者が、今、考えていることを如実に表現した事実が「行政処分」から見て取れる。そこには、各自治体の考え方だけでなく、処理業者の今の姿がある。同時に、廃棄物の全工程における適正処理に関する責務を全うしなければならない排出者は、行政処分の結果を他人事とでなく自身の問題として捉えねばならないと考える。次回以降、当社が収集した最新の行政処分(’07/08年)を分析することにより、行政、処理業者、排出者の各々の視点から廃棄物処理における今日的なリスクマネジメントをどう考えて行くか読者と一緒に考えた。
 

循環型社会づくりへの警鐘

~行政処分緑書07/08より~

環境新聞(2008年6月~10月)  木川 仁

→Summary

今後の産廃処理業界を取り巻く経営環境は、地球環境問題の解決であることは言うまでもない。また、顧客である排出者でも同様に地球環境問題が経営課題として顕在化しているため、処理業者は、顧客に対して競争優位を確保できるような事業展開を実施できなければ明るい将来像は描けない。これに気づいた一部の経営者は、既に、具体的な行動を起こしている。この領域では、排出者や処理業者といった法制度上の区別はなく、同じ課題を如何に早く解決できるかの競争が始まっている。このように、排出者と処理業者が同じ土俵で勝負する時代が到来した今、処理業界を考える上で重要なキーワードは、「一般社会と共通の経営理念の共有化」にあると考える。
一般社会の意識変化は、経営者や行政の想像をはるかに超えたスピードで動いている。排出者や行政が、20世紀の感覚で産廃処理業界を見てはならない時代になったことを日頃から認識すべき時代になった。この認識に関して、特に、処理業者と行政が考えていることを如実に表現した事実が、行政が行う「行政処分」に見て取れる。そこには、自治体の考え方だけでなく、処理業者の今の姿がある。つまり、全国の自治体の行政処分を詳細分析することで、今後の産廃処理事業の将来像が見えて来ると言っても過言でない。
昨年、株式会社日本廃棄物管理機構は、自治体から行政処分が開示された時、即時にその情報を入手するシステムを開発した。今回、このシステムを使って、2007年1月以降の公開情報を調査した。次回以降、最新の行政処分の動向について、行政、処理業者、排出者の各々の視点から分析した。

 
  • アソシエイツ&スタッフ
  • 木川仁
  • 七田佳代子
  • 小西道子
 
ページトップ